すいすい小噺#28


小学校高学年の男の子
単純な「足し算」が苦手なようで
駄菓子を買いながら数えていたはずだが
自分でもいくらかわからなくなって
その度に一緒に来ていたママに突っ込まれている

いくつかの駄菓子と共に
ダントツ人気のサッカースクラッチも買って

あれ?いくらだっけなぁ〜

と結局、オジサンと一緒に数える
スクラッチ紙を持ってくる
イタリアに勝利、で
20円分のお菓子引き換えの権利をゲット

当たり分の商品を手にしながら
また駄菓子を買い重ね
同じようにママに突っ込まれている

しばらく離れて
モグモグお菓子を食べてたか、と思ったら
スクラッチ紙を持ってくる
スペインに勝利、で
50円分のお菓子引き換えの権利をゲット

お〜、この連チャン、凄いよ!無いよ!

思わず声を掛けると
ニヤッとした男の子は
当たり分の商品を手にしながら
ママが友達と立ち話をしていたので
公園の方へ遊びに行った

日が暮れるのが早くなった
秋風が肌寒く感じる
営業時間は約1時間だけど
この1時間はとても心地良いひととき
みんな思い思いの時間

もう一気に暗がりが迫ってきて
すいすいの灯りが周りを照らす
あの男の子が帰ってきた
スクラッチ紙を手に持っている

マジかよ、もしかして・・・

オジサンの中で期待がふくらむ
手にしていたスクラッチ紙
ブラジルに勝っている!

前代未聞の三連勝

100円分のお菓子引き換えの権利をゲット
廻りに、すげぇー! の声がとびかう

その瞬間
この子は「足し算」無くても
生きていける子なのかもしれない
と本気で思った

みんな良いものを持っている





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